幸い、腫れてるなんてことはなかったけど、赤く染まった唇がその恐怖をよみがえらせた。 「うぅ……泣くな、バ、バカ!痛くなんか、ない。悲しくなんか……ない」 だけど涙が溢れる。 ほんとは痛かった。 ほんとは悲しかった。 泣きたくて、叫びたくて、助けてほしくて。 「……う、うぅ…っ」 誰もいないトイレで、誰にも聞こえないように泣いた。