ちょっ、ちょーっ!!


「重いいいっ!!」


「お前、今“らしくない”って思ってただろ…?」


うぇええっ?!


こ、心、読まれたーっ!!!?



「い、いやだなー…。思ってるわけないじゃんか!!(汗)」


重さをかけられていた掌から抜け出し、慌てて自分の顔の前で手を大きく左右に振った。


「ったく、お前は…。」


はぁーっとため息をつき、翔先生は私を上からジロリと見下ろした。



こ、怖い!!

生徒を睨むなーっ!!


苦笑いを浮かべたまま固まっていると、翔先生はもう一度ため息をついた。


「…今日はもういいぞ。わざわざ悪かったな。」


翔先生は優しい表情に戻してそう言った。





…昔から、優しいよなぁ。



翔くんは、結局私達の好きなようにさせていたと思う。



そりゃあ、練習はきつかったけど、いつだって私達の意見をきちんと聞いてくれた。





───いい先生、なんだ。


「…翔先生、ありがとね!!」


なんだ。


私も十分らしくないことを思ってるじゃんか。



おかしくなって、来たときとは打って変わって自然に笑顔になれた。



「…唯璃、忘れるなよ。お前には味方がいるんだってこと!近くにも、遠くにもな。」


翔先生は最後にそう言って、教務室に戻っていった。




一人になった廊下の壁に自分の背を預けた。






「…言えるか、どうか…か。」


天井を見上げて呟いた私に、どこからか声がかけられた。








「唯璃…。」