ひとりきりになった保健室は、もうほとんどオレンジ色の光は入ってきてなかった。

「…今、何時だろ…。」



そう呟いて、窓から見える暗くなりはじめた空を見つめた。






この空は……

前から変わんないなぁ…




空色、オレンジ色、黒と、


グラデーションになっている空はゾッとするくらい綺麗に見える。


私だけが、そう感じるのかもしれないけど。







♪〜♪〜♪

「ぉわっ?!」

不意に携帯が鳴って、急いでポッケから取り出した。


「えーと、………ひなちゃん?」


着信はひなちゃんからで、何の用だろうと通話ボタンを押した。



「もしもーし、ひなちゃん?」

『もしもーし、じゃないでしょ!!
 いつまで、待たせる気?!』

「ひっ?!」




こ、怖い!?

すっごい怒ってるよ!!!

日向様!!




そういえば、待たせてたんだ。

忘れてた……(汗)

『…今、忘れてた。とか思ってたでしょ?』

「ぅえ?!お、思ってないよ!!」


心、読まれたぁああ!!!




かなりご立腹のひなちゃんは大きくため息をつくと、呆れたように話し始めた。



『…まぁ、多分なんかあったんでしょ?とりあえず、帰るよ。
 今、どこにいるの?』





…ひなちゃんのこういう所が好きだな。普通に気付いて、普通に接してくれる。



変に気を使われるのは嫌だもん。


「ん〜、保健室、かな?」


『なんで、疑問系なのよ……?


 はぁー、分かった。行く。』


ひなちゃんはそう言って電話を切った。





「…ありがと、ひなちゃん。」

呟いた後、あることに気付いた。






ああ、そうだ。



あの人に、………望月に、お礼を言ってなかったな。




今さら、かな?





なるべく、今日中には言いたくて電話しようと思ったけど。


「いや、無理だろ。」



そう言って、開きかけた携帯を閉じた。