:宮比side



「でも、俺は泣きそうな顔して、笑ってる奴を見てないふりできるほど器用な奴じゃないんだよ。」





無視することなんて、
できないんだ。


苦しんでいるなら、
助けてあげたい。






それが唯璃なら、なおさら。


何故か分からないけど……。



「…でも…。」


出会ったばかりの俺に聞く権利はないと思う。



「今は、聞かない……。



唯璃を何も知らないのに聞く権利はないと思うから。」



だから、


だから……────






「だから、唯璃を知りたい。」






なんで、


泣きそうな顔して笑うのか。


なんで、


さっき諦めた表情をしたのか。







なんで、今。


そんなに戸惑っている
表情をしているのか。





知りたいんだよ。


「どんなに時間がかかってもいいから、唯璃が何に苦しんでいるか知りたい。
……そんで、助けたい。」


そう言ったら、唯璃は驚いたように目を見開いたけど何も言わなかった。




今すぐ、何かできなくても時間がかかっても、助けようって。


そう、決めたんだ。




だって……、

『できない』って言うのは、





やれない、やらない

って言ってるのと同じだろ?




結果はどっちも

『できてない』…なんだから。



そんな言い訳、俺はしたくない。


やらないまま、できないなんて

言いたくないんだ。





俺を戸惑ったような顔で見上げている唯璃をぎゅっと抱きしめた。


「…分かったようなことばっか言って悪いな…。ごめん。」


でも、もう決めたことだから。




唯璃を離して、そのままドアの方へむかい、手をかけた時。




「…っ、望月!!」


名前を呼ばれ、振り返った。