「好きなんだよ」
俺は情けないほどか弱い声でそう告げる
しかし、その声は絢音に届いたようで、絢音の肩が小さく跳ねた
「えっスキ?すき?好き?」
俺の腕の中で呪文のようにそう唱える絢音
俺は、恥ずかしくなって力を緩め絢音に背を向けた
離れた瞬間、驚くほど風が冷たく感じる
「本当?」
背後から聞こえるその声は、なぜか震えているようだった
「たぶん」
俺が照れ隠しに曖昧なことを言うと
絢音は後ろから俺の服を思いっきり引っ張った
「たぶんって!!!
たぶんって何よ!バカ!」
あの腕にこんな力が秘められているのか…
と思ってしまうほどその力は強かった
振り返ると、そこには目にいっぱい涙をためてこちらを見る絢音がいる
風に吹かれ、近くの木の葉がカサカサと柔らかな音をたてた
「お、おい!何で泣いてんだよ」
「まだ泣いてないもん!」
絢音はそう言って目をそらす
不謹慎だと思ったが、その泣き顔にさえ心臓は高鳴る
「じゃあこれから泣くのかよ」
そう言うと、今にも溢れんばかりに涙が目にいっぱいになった
「わ、悪かった
たぶんじゃないよ」
俺がそう言いながら頭をかくと、絢音は震える声で口を開いた
「ほんとに?」
「本当に」
「あたしも、大好き」

