全ての曲が終わってもなお冷めない会場


そんな会場いっぱいに響いたアンコールの声


それに答えた俺らは、いよいよ本当に最後となる曲に移ろうとしていた


ステージに立つまではあんなに緊張していたのに、立ってしまえば時間の経過なんてアッと言う間だ


それぐらい俺は音楽が好きで、歌うことが好きなんだろう


まだまだ続けたいけれど時間は有限なんだ


「次は最後の曲です」


いつまでもこうしてはいられない


それはライブじゃなくても同じことなんだ


時間は、どんな時でも止まらず進んでいる


これまでの人生で、嫌と言うほどそのことを実感してきた


でも、そんな有限な時間を無限にするのは自分自身なんだと、最近では思うようになってきている


今回のライブをするにあたり、俺は色々なことを考えた


自分の中の自分と出来る限り向き合う努力をした


そしてその葛藤の末に出来たのは正しい回答ではなくて、やっぱり歌だった


最後の曲は、そんな俺が作った曲だ


その歌を歌いたい理由があった


そして聞いてほしい人がいた


少し俺らしくはないけど…


それでも、この歌を歌うことでまた少し答えに近づけるような気がした


だから・・・


俺はゆっくり息を吸うと、右手を真上にまっすぐ伸ばして


天を仰いだ