“弾いてみる?”
予想もしなかった言葉に慌てる俺
『でも僕、弾いたことないし…』
君みたいに上手に弾けるわけないし
俺は俯いた
少女の奏でる音色が好きで、それを聞くために来ていた俺は、自分がその音を奏でることなど考えていなかった
それに、僕がこんなキレイな音を奏でられるわけない
そう素直に思ったのを今でも覚えている
『大丈夫
あたちが教えてあげる』
しかし少女は俺の言葉や思いをよそにそう言って立ち上がった
その目に捉えられると“嫌だ”何て言えなかった
渋々椅子に座り白い鍵盤に触れてみる
~♪
綺麗な、透き通った音
それは単調な1音だったけど、とてもきれいな音色だった
『キレイな音でしょ?』
そう言って少女は微笑んだ
僕にも、こんな僕も、この子のように
綺麗な音を響かせられるのだろうか?
そうして、俺は教えられるがままに
無我夢中に指を動かした
『出来ないよ…』
『そんなことないよ!
とっても上手!
あたちも最初はできなかったんだから』

