薄いピンクのワンピースを着た
髪の長い女の子だった気がする
顔は曖昧ではっきりとは覚えてないけれど
目がぱっちりと大きかったことは覚えている
『君が弾いてたの?』
そう問うと少女は控えめに小さく頷いた
その女の子はきっと自分よりも年下であろうと当時の俺は思った
そんな女の子が、今の音色を?
小さな女の子が奏でるにはあまりに複雑で透き通った音色だった
『聞いてていい?』
何かを考える前にそう言っていた
俺の言葉に恥ずかしそうに俯いた少女は
もう一度小さく頷いた
小さな手がまるで踊るように鍵盤を叩く
その綺麗で透き通った音色を聞いていると、時間が止まったように錯覚しそうだった
そしてその瞬間だけ凍り付いてしまった心が暖かくなって
過去に縛られた厚い氷が一瞬で溶けてしまった

