「え、あ、はい」


確かにあたしは幼いころからピアノが弾けた


でも、急になぜ?


首を傾げていると梨華さんは何かを鞄から取り出した


「これ、蒼空が小さいころ書いていた日記帳
誰にも言えない思いを文章に残す

こういうところも蒼空は母に似てるわ」


梨華さんはそう言ってほほ笑みながらそれをあたしに差し出す


あたしはその小さな日記帳を手に取った


綺麗な水色一色のシンプルなノート


「開いてみて?」


あたしはそういわれてゆっくりそのノートを開いた


“なぜか分からないけど
ボクは何も信じられない


まるで真っ暗なやみの中にいるみたいだ”


初めのページにはぎこちない字でそう書かれていた


「それは蒼空が小学校2年ぐらいの時に書いたものよ」


どんどんページを開いていく


そこにはどれも短い言葉で
蒼空の中にある孤独との葛藤が綴られていた


しかしある時、その記事は変わった


“深い深いやみの中にも
光はともるのだろうか?


今日ボクは光をみつけた”


―光をみつけた―


日記には確かにそう書かれていた