怒りが頂点に達したあたしが地味メガネに掴みかかろうとした時だった


カンカンカーン



ボクシングなんかの試合終了を告げる金属音が聞こえた、気がした



そして背後から梨華さんが現れあたしたちの間に入ると



自然に言い合いがピタリと治まった



静かになったあたしたちに他の従業員は「おー」と拍手を始める



「もうすぐ、開店だから
続きは他でしてね?」


「もうしないっつの」


地味メガネはため息を着きながら


てか、俺、殆ど喋ってねー


とブツブツ呟きながらロッカールームのドアノブに手をかける



あたしはと言うと
一気に熱が冷め…



正気に戻り…



電池を抜かれたロボットのように唖然と立ち尽くしていた



や…ヤバい…?



「そうだ!」



頭がやっと状況を把握し始めた頃
梨華さんがスタッフルームに入ろうとする地味メガネの腕を掴んだ



「次は何だよ?」



掴まれてない方の手でめんどくさそうに頭をかき眉間にシワをよせる地味メガネ



あたしは妙に弾んだ声に不思議と嫌な予感がして梨華さんを凝視した



「ソラと絢音ちゃん仲良くなったみたいだし、



絢音ちゃんが仕事に慣れるまでソラが面倒見て上げて」



え?



言葉が一度耳を左から右に通り抜けた



あたしが…誰に?



ようやく頭に入って来た梨華さんの言葉に首を傾げ



辺りをグルッと見回す



どうやら嫌な予感は外れてはいないみたい…という事をバッチリ合った、あの、レンズ越しの瞳が証明していた