「……今日は、自習にするよ。ごめん。帰っていいよ」



沢原くんは、私を見ずにそうつぶやいた。
 再試は明日だ。



私は、ただ黙って立ち上がり、何も言わずに教室を後にした。



校舎を出ると、私は走り出した。



沢原くんが、私を好き。



だけれども、花村さんとつきあっていた。



……花村さんの方が、よっぽど魅力的なのに。



どうして私を好きだって言うの?



平々凡々で、何の取り柄もない私を。



どうして好きだって言えるの?



私は困惑していた。



私も、沢原くんが好き。
 


……好きなはずなのに……。