「じゃあ、次」



と、私が言うと、



「次は……終わり」



と沢原くんは教科書を閉じながら言った。



「え? もう終わりにするの?」



「もう解らないところないから。今日のところはこれでいいや」



「ずいぶんマイペースなのね」



「そうかも。明日はワークブックの方教えてね。応用問題って、どうも苦手だ」


「うん」



「さぁて、バドミントン部に乗り込んでこよっと」



沢原くんは、両手を思いっきり上にあげて伸びをしながら言った。



「それで、今日は勉強終わりって言ったのね」



「それも、ある。だけど、ほんとに解ったから。千尋ちゃんて、教え方ウマイね」



「いや、別に……私は何もしてないけど」



「解りやすいよ」



そう言って、彼は私に笑顔を向けた。



その言葉と笑顔が何だか嬉しくて、私も笑みを返した。