ここ3日間くらいだ。
あたしはあの黒い男を思い出しては不安で堪らなくなる。
早く忘れたい。
お母さんやお父さん達に気付かれたくなくて、何事もなく過ごしている振りをしているけど
どこでばれたのか、
1番身近である藤咲さんは、あたしを見るなり眉をひそめるのだ。
「最近、元気が無い様に見えます」
授業の帰り際に、藤咲さんが言った。
「どうして?」
笑みを作ってあたしはきいた。
すると藤咲さんはもっと難しそうに顔を顰るのだ。
まるで難しい計算式を解くような顔だ。
笑っちゃいけないのに、なんだかくすぐったくて、ついにあたしは吹き出してしまった。
「…あおい様?」
「ううん…ごめんなさい藤咲さん。あたしは大丈夫です」
あおいは笑って部屋を出た。
なんで、笑っていられるのかが不思議だ。
ベッドに入ると涙が出るのに。
あの強い力を思い出して
あの冷たい声を思い出して
ひとりになると心細くなって…
――大切な人を地獄に落とす…
どういう意味なのか分からない
大切な人…。
いっぱいいるもの。
迷惑はかけられない。そこの窓からあの人が見てるかもしれない。
あの恐怖を忘れるまでの辛抱だ。
あおいは手をにぎりしめた。

