アリスが帽子屋に着いた頃、ハートの城。




ギィィ……
という音が部屋に響いた。しかし、部屋の中から音も動きも感じられない。

「やぁ、久しぶりだね王様。」

静かだった部屋に少年の声が響く。そして部屋に微妙な空気がながれた。

「シロウサギ…私に何か用かしら?」

「またゲームが始まったよ……そうだ、アリス見なかった?」


シロウサギはまるで何かを楽しんでいるらしく口角を少しあげた。
しかし、王様はその態度が気に入らないが冷静を保った。

「アリス?…私がアリスを見る訳無いでしょう。私がアリスを見るのはアリスの最期。…あなた頭でも狂ったの?」

「ははは…そうだったね。王様のが移っちゃったのかな?」

「…私よりもあなたの方が狂ってるわよ。移るだなんて心外ね。」

王様は口調は穏やかだが、軽くシロウサギを睨んでいる。そんな王様を見てもシロウサギは態度を変えず笑っている。

「…で、私に何の用?」

「特に用は無いよ?…ただ気になることがあっただけだよ。」

「そう…用がないなら早く出て行って貰えるかしら?疲れているの。」

そう言って王様はソファーに座った。そして足を組んだ。
しかしドレスであまり足は見えなかった。

「そっか……邪魔して悪かったね。じゃあ僕はこれで失礼するよ。」

ドアがまたギィィ……と音を立てて閉まった。



廊下は誰もいなく足音が一つだけ響いた。

「……ふふ」

シロウサギの不気味な笑い声が響く。そして足音に紛れ消えた。