あたしはスタッフの顔を気にする余裕もなく、足早に車の中へと戻る。
乱暴に車のドアを閉めると、ケータイを取り出して、身体をシートに預ける。
五コールくらい鳴り響いた後で、お目当てのその人は電話に出た。
「もしも―――」
「今どこにおるんじゃぁ、貞永ーっ…!!」
そう。今電話を掛けた相手は、あたしが怒りを感じている貞永で。
自制出来ない気持ちを、あたしは電話越しの貞永にぶつける。
「あゆ…口調が違―――」
「そんなのどうでもいいわ!今から貞永の家に乗り込むから、絶対家に居てよね!万が一居なかったら…貞永、処刑するから」
そう言い切ったあたしは、貞永の言い分を聞くことなく電話を切った。
…口調が少しだけオジサンっぽくなっていたのは、あえてのスルーという方向で行こう。
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