あたしが貞永の仕事場に着いた時には、既に今日の貞永の出番は終わってしまっていたらしく。
「貞永くんなら、自力で帰っていったよ?」
「は…?」
あたしは、洋画の吹き替えのスタッフにそう告げられ、その場に立ち尽くす。
と同時に、言葉に言い表せない程の感情が、あたしの身体中を覆い始めた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、貞永くんのマネージャーさん…って、ちょっと!?」
スタッフの人が言葉を詰まらせるほど、あたしは強烈な顔をしているのだろうか。
だけど、この煮えたぎる思いは、どうする事も出来ない。
…ふざけんな。
話があると言いながら、勝手に一人だけ帰りやがって!!
「…待ってろよ、貞永光輝!」
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