いつもなら、こんな言葉にも反応していた。
「襲うぞ?」と意地悪な笑みを浮かべて、あたしにセクハラ行為を仕掛けてきていた。
なのに…
「…そうだな」
「え?」
魂が抜けたかのように弱りきっている貞永を見て、あたしはとてつもない程の不安に掻き立てられる。
…貞永、本当にどうしちゃったの?
疲れているというよりかは、何かを抱え込んだような表情を浮かべている。
今すぐにでも抱きしめたい。
貞永を感じたい。
だけど、運転中のあたしにとっては、夢のまた夢。
ただ分かる事は…
貞永は、あたしの知らない「何か」に苦しんでいるという事だけだった。
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