「で?どうしたの?」
一瞬だけ最悪な方向に向かっていた考えを断ち切るように話を振ると、貞永は少しだけ微笑みながら腕を組んだ。
その姿がなんだか色っぽくて、あたしは思わずドキンと胸が高鳴る。
「俺の仕事の事なんだけどさ…」
「何?」
「俺、ドラマや映画とか、演技の仕事だけでなく、他のジャンルにも挑戦してみたいんだ」
…他の、ジャンル?
言っている事が理解できなくて、あたしは首を傾げる。
「どういう事?」
「CMとかバライティーとか、そういう世界にも飛び込んでみたい。ただ演技が出来るだけの俳優じゃなくて、「ファンの人にも身近な俳優」で居たいんだ」
笑顔で語る貞永を見て、ズキン…と胸が苦しくなったような気がした。
.

