周りの人達に感謝する一方で、貞永と神風さんの言い合いは、まだ続いていた。




「俺はあゆの笑顔を守る為だったら、何でもします」



「だったら、ハッピードリームを解雇する、そう言ったらどうするんだ?お前は重すぎる代償を受ける上に、彼女さえ守れなくなるぞ?」




神風さんは、最後の切り札とでも言うように、堂々と「解雇」という言葉を口にする。


解雇という事は、貞永は事実上、ハッピードリームをクビになるという事。


クビになったら、あたしの夢はおろか、貞永の夢まで失う事になってしまう。


…そんなの、ダメだよ!




「もし俺が、あゆと別れると言ったとしても、あゆはハッピードリームに残る事は出来ないんですか?」



「これだけの騒動を巻き起こした上、貞永の株を下げようとした。…残念ながら、彼女には近々辞めてもらうつもりだ」



「そうですか…。じゃ、俺がハッピードリームを解雇されたら、あゆは残れるんですか?」



「それは―――」




予想外の質問に、神風さんの表情が曇る。


まさか貞永が、解雇の話をまともに受けると思っていなかったのだろう。


セットされた髪からは、うっすらと汗が滲んでいるように見えた。




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