だけど、そんなあたしの心配などよそに、神風さんはキャサリンに扮したあたしに一向に気付く事はなくて。
…セーフ。
そう心の中で呟いた瞬間、あたしの耳を、貞永の凛々しい声が貫いていった。
「この度は、忙しい中お集まり頂き、誠にありがとうございます」
そんな、俳優の顔をした貞永の言葉で、熱愛否定会見がスタートした。
マスコミも、あたし達も、誰も言葉を発する事無く、会見を見守っていた。
「先日週刊誌に報道されましたキス写真の件ですが、あの相手は完全に俺のマネージャーです」
瞬間。
貞永は一瞬だけあたしの方を見て、微笑んだ気がした。
いや、絶対に微笑んだ。
貞永は、あたしの存在に、気が付いていたんだ…。
「しかし、あのキスは事故です。たまたま唇が当たってしまった所を、週刊誌の方に撮られただけです」
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