軽めの物体が掌に乗った途端、あたしは目を大きく開く。
慌てたように猛に視線を向けると、意地悪そうな笑みを浮かべながら、その物体を見ていた。
「猛…これって…」
「ハッピードリームの入社許可証。姉ちゃんも知ってるだろ?これが無いとハッピードリームに入れない事くらい」
ハッピードリームは不審者進入対策として、関係者に入社許可証を発行しており、それが無いと会社内に入る事は出来ない。
入社許可証には自分の名前も表記されており、あたしのモノは謹慎中という事で使えないから、心の中でどうしようと悩み始めていたんだけど。
まさか、入社許可証が作られていたとは。
…しかも、偽名で。
「俺のバンドのスタッフ用で申請したら、案外スムーズに通っちゃってさ」
「な…!」
「という訳で、今日限り姉ちゃんは「Truth」のスタッフの“キャサリン”だから」
偽名がキャサリンって…
もう少し、日本人っぽい名前にして欲しかったような…。
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