「本日はメインとなるシーンの撮影ですので、一層気合いを入れ直して、今日一日頑張りましょう!」




どこか張りのある声に、スタッフや出演者、マネージャーのあたしまでもが心を動かされる。


ザワザワと動き始めた人達に混ざって、あたしも行動を開始した。




「貞永ー!」



「どうした、あゆ?」



「今日は外回りが忙しいから、撮影の終わり頃にしか合流できないかも。撮影終わったら連絡ちょうだいね」



「ん」




そっけない返事だけど、これも貞永が仕事に集中しているという、れっきとした証。


フッと表情を緩めたあたしは、小さく貞永に向かって手を振りながら、撮影現場のビルを後にする。




「…頑張ってるかな、菊池」




ちょうど数日前。

菊池は、一人前のマネージャーとして、あたしの元を巣立った。




.