心なしか、貞永の声のトーンが低くなっている。
たくさんあたし達を困らせてくれたけど、大きい存在感を醸し出していた菊池が居なくなると考えると、貞永も寂しいんだね。
しんみりする貞永を気にしながら、あたしは菊池達に再び視線を向ける。
「だから、余計に焦った」
「何が…?」
「このまま一人立ちしてしまうと、蘭に会えなくなるから。俺がマネージャーになった理由は、蘭にあの頃の失態を謝罪する事が目的だったし…」
「という訳で…」と菊池は言葉を残して、蘭としっかりと向かい合う。
最初は俯いて視線を合わせようとしなかった蘭も、今はキチンと菊池の目を見ている。
不思議な雰囲気が、二人を取り囲んでいた。
「ずっと謝りたくてしょうがなかった。…あの時は蘭の気持ちを考えないで、本当にゴメン」
菊池が謝罪の言葉を口にした瞬間、公園中を爽やかなそよ風が包む。
気持ち良さを感じながら、蘭の口からは「もういいから」という、和解を示す言葉が放たれた。
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