―――瞬間。
あたしは、目の前に広がる光景を、思わず疑ってしまった。
だって、だって。
足音の正体は…
「あれ、菊池じゃねぇか…?」
隣で観察していた貞永が、あたしの変わりに気持ちを述べてくれる。
髪を掻き上げながら、ゆっくりと冬馬達に近付いているのは、紛れも無く菊池で。
きっと、あたし達の跡をつけてきたのだろう。
…という事は。
「やっぱりバレてたんスね。気付かれないと思ってたのに」
「俺は分かってたよ。菊池くんが俺達を観察してるってね」
あたし達の存在は、バレていなかったんだ…。
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