「俺は全部分かってるよ」



「…何を、よ」



「蘭が、こんな状態になっている訳」




蘭の前に立つと、冬馬は蘭の髪を一掴みし、ゆっくりと離していく。


蘭の黒髪が、サラサラ…と落ちていく光景は、何だか神秘的に感じた。




「普段クールで、意地っ張りで、落ち着いている蘭が、こんなに泣きはらして、胸を痛めている原因が、分かるって言ってるの」



「なっ…、嘘に決まって―――」



「嘘じゃない」




凛とした声が、公園中を包んでいく。




「蘭、今から俺の話をするから、静かに聞いててね?」




蘭の髪から手を離すと、ゆっくりと思い出すように語りだした―――




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