やっとの思いで、蘭の手首を掴んだ。


全力で走りすぎたせいか、ハアハア…と息が乱れる。




「離してッ…!」



「離さない!蘭、さっきのは―――」



「だから言い訳なんて聞きたくないって、さっきも言ったでしょう!?」



「それでも、あたしは話を聞いて欲しいのっ…!」




蘭の手首を掴んだまま、あたしは必死に叫び声をあげる。


あたし達が今居る場所は、撮影現場のビルの中でも、普段使用されていない所。


人影がなくて、少し安心した。


この話は、絶対に他人には聞かれてはいけない内容だから。




「蘭、さっきのはあたしが階段から落ちて、それで―――」



「…そういう事だったのね」




突然蘭の声色が変わった事に驚いたあたしは、さっきの事故を説明するのを止めて、ゆっくりと蘭の表情を伺った。




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