突然聞こえてきた、透き通ったような声は、あたしの震えを、更に増大させる。


あたしと同じ、震える声を必死に絞り出しているのが分かって、心の中に罪悪感という小さな芽が生まれる。


芽を摘む事がないまま、あたしはゆっくりと、声の主の方を振り返った。




「何…してるの、あゆ…」



「蘭…」



「ねぇ…答えてよ、あゆ…!今何してたの!?冬馬と…何をしてたのよッ―――!?」




蘭の余裕のない叫び声が、この緊迫した雰囲気を、更に圧迫していく。



何も答えられない。

答える事が出来ない。



黙ったままのあたしを、蘭は軽蔑したような視線で見つめてくるのが分かった。



…ダメだ。

蘭は完全に知っている。


あたしと冬馬がキスしている場面を、見てしまったんだ。




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