「じゃ、そろそろ帰るね」



「分かった。お互い頑張ろうね!」




バイバイという言葉の代わりに手を振ると、冬馬はピースサインをあたしの方へと向けて、静かに控え室を出て行った。


シーンと静まり返った控え室には、あたしの複雑な心の内しか残っていない。



―――冬馬の事を好きな蘭。

同じく、蘭の事を好きな冬馬。


そして…

蘭と何らかの繋がりがある、菊池。



パッと見れば、冬馬と蘭は両思いのはずなんだけど、今回はそうもいかない。


菊池の気持ちがまったく分からないし、何より、蘭が冬馬を避け始めているから、余計に複雑だ。




「みんなが幸せになる方法があればいいのに…」




あたし以外誰も存在しない控え室で、祈るように呟いた。




.