猛の気持ちを痛いほど理解した所で、あたし達は料理の注文を取る事にした。
…あたしだって実を言うと、猛と同じ事を思っていた。
大事な仲間と楽しく過ごして、貞永が居なくなった寂しさを紛らわせたかった。
だけど、みんなは芸能人やそのマネージャー。
お互いに大事な仕事を抱えているし、スケジュールだって全員が合う事など皆無に等しい。
簡単にいかない事くらい、きちんと頭の中で理解していた。
もしかしたら猛は、そんなあたしの些細な気持ちにさえも、気付いていたのかもしれないね。
人の気持ちを誰よりも理解してくれる。
それが、中森猛という存在だから。
「あゆ、お酒は?」
楽しそうな冬馬の声が、個室の中に響き渡る。
その言葉を聞いた途端、あたしの表情は苦笑いに変わった。
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