ドクドクと心臓が煩い。
…この感覚、凄く似てる。
貞永がハリウッドに旅立つ事を知らされた、あの日と同じだ。
という事は…
また、何かがあたし達の周りで起こるって事…?
そう思わざるを得ない程、あたしの心は不安で覆われていく。
「―――あ、そうなんですか」
本当は、聞きたくない。
電話越しに小西さんと会話する、貞永の声を。
大抵の場合、ケータイでの会話を聞いていると、どんな内容を話しているのかくらいは、嫌でも分かってしまう。
分かりたくなかったから。
だから、今は貞永の声を聞きたくない―――
そう心に願った瞬間、
「…え?」
貞永の困惑に満ち溢れた声が、車内中に響き渡った。
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