ジリジリと追い詰められる中、あたしは何度も叫ぶが、周りは草木が生い茂る道のド真ん中。


こんな道を車が走っている訳もなく、完全にあたしと中型バイクの男の人との二人きりだ。




「やだ…来ないで!」



「あのなぁ、俺は―――」



「やぁー!誘拐されたくないよ!殺さないでーっ…!」




この一言がいけなかったのだろうか。


男の人の額に血管がピクッと浮き出るのを、あたしはこの目で確認してしまった。




「だーれーがー誘拐だ?ああ゙?」



「ひぃッ…!」




完全にキレたらしい男の人は、あたしの頭に乱暴にヘルメットを被せると、強引にあたしを抱き上げて、バイクに乗らせる。


ヘルメットを被り直したその人は、あたしが逃げる暇すら与えてくれないまま、バイクを発進させた。




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