crystal love

「おい、ディオナ。待てよ。」

背後すぐ傍から、声をかけられ
左手首に痛みを感じた。

ブレスレットの上から
手首を拘束され、ワイヤーと
ガラス細工が変形して
手首に食い込むのがわかる。


「いたいわね。放してよ。」

振り返らなくても
あの男の仕業だとわかり
手首を乱暴に振り払う。

が、

力が強くて、手首は
解放されないどころか、
返って傷めたらしく、
指先へ血がしたたる。


血・・・?


相手は皮革の手袋を
しているから、私の手首から
伝わったモノだろう。


「お前な、ムカつくんだよ
二度と俺の前に現れんな。

それとも、いま、お前の手首、
使いもんにならない様に
しちまうか?」

そう言って、更に加圧される。

痛いーーーー

痛め付けられる体より
心の方が痛い。

一時は、本気で愛していた男に
これほど、恨まれている
この現実が痛くて苦しい。

「私だって、会いたくないわよ。
もう、紫色になってる。
放してよ。」

なるだけ、刺激をしない様に
しずかに制止した。



「ハロー。ディオナ。」


華やかな声と共に
横に立つ男の顔面が
掌で押しのけられる。


「オッサン、汚い手で
コイツに触るな。」

そういって、放された手首に
視線をやったジェイドの
顔色が一瞬にして変わった。


「おい。逆恨みも
いい加減にしろよ」

その迫力に、男は
気迫負けした様子で、
歯切れの悪い、言葉が続く。

「そのオンナは・・・」

「俺のオンナだよ
十年も前の話だろ?!
コイツが、オマエに
惚れてたっつーのは
いつまでも
自惚れてんじゃねーよ」

ジェイドのタンカが飛ぶ。


「まさか・・・君、
モデルだろ?こんな普通の・・・」

「あんまり、俺を怒らせるな。」

ジェイドの肩が震えた。