「目を見て、説明して。」

そう詳細を促せば、彼は
素直に従い、希望を口にした。

「エレナの生活とか、
一般的な家庭の生活を
体験しておきたかった。」

本格的ね・・・
ちょっと、気合いを
入れすぎな気もするけど。

「俺は、自分に足りないモノ
全てを補って、オーディションに
臨みたい。」


ホームステイね・・・


知人に、
当たってやれない事は、
ない。


「ジェイド、台本で
わかんないところ、
ほかになかった?」

「ああ。パーフェクトさ。」

「自己PRとかも言える?」

「完璧。」

そうでしょうね・・・
それだけ達者に喋れたら。


「じゃあ、この国の歴史を、
エレナ語で言ってみて。」

「え?歴史・・・?」

この国の歴史は浅い。
他の大陸から、移民が開拓しに
きたんだから、さほど、有名な
何かがあるわけではない。
もちろん、何もない訳じゃ
ないけど、語りにくいだろう。

「少し、時間くれ・・・」

目論見どおり、彼は回答に
行き詰まった。

「いいわよ。少し外して戻るから
その間に考えておいてね。」

笑みを向け、教員室へ
引き返した。