「本当に、何ともないの?」


ジェスの腕の中で問えば


「ああ。流石に、しばらくは、
失神したけど、頭も打ってないし
骨折も、むち打ちも無いし
パーフェクト。」


何とも、彼らしい
楽観した台詞に
漸くホッとしたのだった。



・・・が、



それも、束の間






どうやら、消毒薬が染みるからと
なかなか腕の傷の治療を
受けつけないジェスと
ナースの口論が激化する。

いい加減、業を煮やしたナースが
私に助けを求めて来た。


「ちょっと、この人を
押さえてもらえません?」


・・・全く、変な所だけ
大きな子供なんだから。


ナースに頷き応え、
ベッドに腰かけたジェスに
歩み寄る。


「暴れちゃダメよ。」



彼の頭部を腕に抱き取れば
大人しく怪我のない腕を
私の腰にまわし抱き止める。


「染みるの嫌いなんだ。
サイアク」

そういって、ギリギリ
抱き締める腕に力を込める
所をみれば
本当に、苦手なんだろう。


「まったく、根性のない
オトコねぇ・・・
あなたも苦労するわねぇ。
手のかかる恋人を持つと。」


母ほどの年格好のナースが
呆れて嘆息した。


「ええ・・・本当に。

わがままでーーー

何するか、わかんなくてーーー

困った子ね。ジェスは。」


安堵の涙と共に
本音を吐き出せば


「やっとーーー

恋人って・・・認めたな。」



私の胸元に、顔を埋めたまま

穏やかな声色で、そういって



彼は、私を抱き締めた腕に
力を込めた。