今思えば・・・
あの時、彼はーーー
本気で聞いていたのかも
しれないーーーー
・・・いつもの、
たちの悪い冗談だなんて
思っていたけれど・・・
あれは、ジェスを担当しだして
直ぐーーー位の、出来事だったと
思う。
遅めの昼休み、カフェで
芸術系専門誌を読みふけっていた
時のことだった。
新鋭写真家の作品が
掲載されていたのだが、
たくさんのキャンパスに
ジェイドの写真が投影されていた。
撮影に使われたキャンパスの
一点一点を解説した号だったの
だけれどもーーー
思わず、息を飲む。
本当に・・・驚くほど
キレーな顔をしている。
・・・やっぱり、人目をひく子
整った容姿と、独特の雰囲気を
醸し出す姿に見入ってしまった。
だからーーー
『ディオナ。俺の事好きなの?』
完全にスキだらけだった
背後から被さるように
突然、そう耳元でささやかれて、
はからずも、ビクッと体が
飛びはねた。



