「ディオナ。」
ジェスが呼ぶ。
そちらを見遣れば
まっすぐな視線が
私を捕らえていた。
「俺の事、キライ?」
「そんな事ないよ。好きだよ。」
「それは、男として?
家族として?
ハリソンと俺、どっちが好き?
大事?」
矢継ぎ早に問われる。
ーーーそれは、近頃考えてしまう
内容でありーーーー
どちらが大事なんてーーー
私の中ではジェスに
決まっているのに・・・
どうして・・・
ボスをーーーハリソンを
選択肢に入れてしまうのだろう。
いつの間に、条件で
隣にいる誰かを選ぶような
人間になっていたのだろう。
「・・・ジェス、よ・・・」
「ディオナ。
・・・この国に、何があるんだ?
確かにお前は、コンペで
賞とチャンスを得たよ。
でも、それって・・・
ここじゃないとデキナイ事か?
エレナでは出来ない事か?
お前は、帰る所があるんだよ?
父さんも、母さんも、エリスも。
皆、待っててくれる。
・・・それに、俺もね。
何で、そこから逃げるの?
何処まで逃げ続ける?
一体、お前は何から逃げてる?
自分で把握してるのか?!
それを。」
彼の抱えてきた思いを
ぶつけられて受け止めきれず
ただ黙ってしまった私を
彼は抱き止める。
「お前がやってのは・・・
打算なんだよ。
ここにいたら、お前は
知らずにハリソンに合わせて
自分のやりたいことだって
いつか忘れるよ?
ディオナにとってオトコは
それほど重要な位置を占めてる。
・・すべてで応えようと
するんだから。」



