crystal love



電話を切っても
耳の中に、心臓があるみたいに
鼓動が響いている。

「もう・・・ジェス
やめてよね・・・」

もはや、咎める声も
色事に当たった様な
かすれた声しか
出てこない。


「もう一回、抱きたい。」

ストレートに告げられる欲に
流されまいと、私は必死だ。

「ダメよ。・・・もう
帰らないとダメでしょ。」

まだ、万全の体調じゃないのだから
・・・と、促せば

「チェックアウトしてきたから
平気だ。」

と、のたまふ。

「・・・はっ?」

「今晩は一緒にいよう。」

相変わらず、耳元で囁く彼に
混乱する。

「また離れて暮らすんだぜ・・・
おかしくなりそうだ。俺・・・」

そういって、自身の唇で
私の顎先を、自分の方へ
誘う様に導いて、
彼は、今日、何度目かの
キスをした。

「ダメ。続きは・・・しない。」

彼の腕を解き、体を離し、
食器を片付ける。

視界の隅に、椅子に片足を抱えて
座るジェスを捉える。