リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『純愛』・3

その後、彼は理数系の大学に進むことを決めた。

大学をちゃんと合格して、高校を卒業した。

卒業式が終わった後、校庭で彼と目が合った。

彼は真面目な顔で礼をして、去って行った。

―あれから5年の月日が流れた。

あたしは今でも同じ高校で教師をしている。

彼が去った後は、至って平凡な日々を送っていた。

だけどふと思い出してしまった。

あたしは彼にだけ、女性としての顔を見せてしまったことを。

それは自覚していなかったけど、あたしは彼のことを…。

夕日の差し込む教室で1人、ため息をつく。

「先生」

あっ、幻聴まで聞こえてきた。よりにもよって彼の声。

「先生、約束、覚えていますか?」

「えっ…?」