耳に残るのは紗菜さんが言った、『あたし』の言葉。 「残念だったわね、満川」 紗菜さんが笑いながら言う。 「料理だけじゃなく、満川の愛情も足りなかったのよ?わかる?」 あたしは言葉が出てこなかった。 あたし、紗菜さんに負けた? 料理だけじゃなくて、好きって気持ちも負けた? どうしよう。すごいショック。 「それで満川。あの約束覚えてるわよね?」 忘れるわけがない。 でも、あの約束がまさか自分になるなんて思ってもいなかった。 「約束通り、 今後洵介くんに近づかないでね」 ───嫌だ。