深想シンドローム



まるで地鳴りかと思うくらい、騒がしさを増した校庭。

それに誘われるように振り返れば、ようやく見つけた尋ね人。



「――ミチルくん…。」



幻かと思った。

目の錯覚なんじゃないかと、瞬きをしたいのに視線が離せなくて。



ミチルくんは気怠るそうにグラウンドを歩きながら、眉間にシワを寄せてあたしを見てる。

その態度は
急ぐ様子なんて微塵もない。

相変わらずあちこちから黄色い声が飛び交っていて、ミチルくんはそれを疎ましそうに睨んでいた。



でも、あたしの前で立ち止まるとミチルくんは途端にニッと笑う。

そしてジャージのポケットに手を突っ込んだまま、言った。



「よぉ、ミーコ。」


たったそれだけ。

その一言だけ。


なのに、何でだろう。



胸の奥が、ぎゅっと縮まって何も言葉に出来なかった。


本当は言いたいこと、たくさんあったはずなのに。


今までどこ行ってたの、とか。

心配したんだよ、とか。



だけど、目の前に居るミチルくんは笑ってる。


それだけで、もう十分だった。

来てくれた、それだけで涙が止まらなかったんだ。