「夏は産みたいの?」


「わかんない。
自分の気持ちが分かんないの。
でもね、産みたいって言ったら嘘になると思う。どこかで誰にも知られずに、この子をおろせたらって思ってた。
だってあたし怖いよ。あたしの中に新しい命があるなんて考えられない。
自分のこともまともに出来ないのに…
あたしに子供を育てられると思う?
もうどうしていいか分かんないよ」






誰だってそうだよ


誰だって不安になる


自分が新しい命を誕生させるんだもん


当たり前だよ



「きついこと言うようだけど……
もしこのことをたくちゃんに言って、彼が逃げ出すような人だったらたくちゃんはそれまでの人だったってことだよ。
ここまで来たらあたしと夏だけで解決できるような問題じゃない。
たくちゃんの意思で色々変わってくるもん。」



あたしの夏への精一杯の気持ち



夏は泣き続けるだけだったけど



やがて一言

はっきりこう言った



「分かった。
たくちゃんに話してみる。」