「あ、あの…本当に土ついちゃうよ?明日も学校あるのに洗濯したら……」

「うるせぇな…!」


俺は声を出した。滅多に出さない大声で。


「…え?」

「俺のことより今は自分のことだけ考えてろよ…これだから俺はお前が苦手なんだよ」

「それって…」

「自分のこと考えないで、他人のことばかり考える奴。そういう奴に限ってトラブル起こして、他人を迷惑させるんだよ」

「……ごめんなさ…っグス…」

「そういう泣き虫なとこ。そこも嫌い」


矢崎桜はとても悲しそうな顔で俺を見た。
目で何かを言っているような気がした。


「…体操着じゃないから帰る」

「待っ…上原っ…く…グスッ」


矢崎桜の目から零れた涙が、グラウンドの土に染み渡った。


「…泣いたら俺が慰めると思った?」


涙を拭いていた腕が止まったような気がした


「…残念だったな。俺は神さんや麗さんみたいに、あんたに優しくないんだ。だから俺に涙見せても意味無いから」


俺はその場から去った。矢崎桜の顔は見ていない。
どうせ泣きじゃくって先輩達に言うんだろうな…めんどくせー女……


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