王都から旅立つ前の出来事を思い浮かべる。


討伐隊メンバーの交流を目的とした親睦会。


セシエルに突っ掛かってきたレインを止めたのがベリルだった。


それ以来、レインはベリルに威圧的な態度を取っていた。


それこそ子供のイタズラのような嫌がらせを受けてきた。


食べ物に香辛料をこっそり混ぜたり、剣と鞘を氷でくっ付けて抜けなくさせたり、挙句の果てには王都出発の前日に部屋にこっそり侵入して荷物を全て氷漬けにされたりもした。


けれど今回のことは、あの時の出来事とは関係ない。イタズラでは済まされないことだ。


人を殺めることに抵抗がなさすぎる。


他人の未来を奪うということは、その人の未来を背負うということでもある。


命を奪うことに罪悪感を覚えぬ人などいない。


平気なふりをしていても、心の奥底では罪の意識が徐々に積もり積もっていく。


このままでは、レインは未来の重みで潰れてしまう。