「不思議か? なんてことはない、私の周りの大気の熱を少し上昇させただけだ。君の魔法が発動するとほぼ同時にね。
忘れてもらっては困る。言っただろう? 私の体内を駆け巡る多種多様の血は、私に無限の力を与えてくれた……と。
王国の主要な一族の力はほぼ取り込んだ。つまり君は、ファンタジア王国そのものに手を上げたというわけだ。
だが私は先にも言ったように寛大だ。一度だけなら目を瞑ってやってもいい。
最終警告だ。氷眼の民の隠れ里を教えろ。
坊やが私と戦う理由などないはずだ」


オメガの能力。それはファンタジア王国に存在する各部族の全ての能力。


ドラゴンをすら支配するほどの力を持った人物。


ただでさえ手負いの身。その状況でこの人物に勝てる見込みはあるのだろうか?


「……はっ。戦う理由か」


レインはユリエスの四方に氷壁を張った。


「確かに貴様の言う通りだ。僕にとって国や国民などどうでもいい存在だ。だがな」


氷の刃がその手に握られる。


左肩の影響もあるのだろう。その刀身は、僅かだが刃こぼれが目立つ。


その切っ先をオメガに向け、レインは言い放った。