痛みに身を委ねれば楽になれるだろうか?


そんな思いがふと脳裏を過ぎるが、頭を振って疑問を振り切った。


倒れるわけにはいかない。倒れてはいけない。


時の感覚が元に戻り始めると、眼前でレインの肩を押えるユリエスの叫び声が聞こえた。


「大丈夫か! おい、しっかりしろ!」


「……うるさい。耳障りだ」


手を振り払うと、ゆっくりと立ち上がる。


視界がぼやける。


だがそれは両目に巻かれた包帯のせいでも、痛みによるものでもない。


吹雪が治まったアレグリア平原に、今度は濃い霧が辺りを包みこんでいた。


雪とは全く異なる白き世界。


その中でシュッと大気を切り裂く音が響くと、レインの眼前になにかが落下した。