SAYONARA

 あたしは彼のところに行く。

 美枝は意外そうな顔であたしと彼を見比べていた。

「良いの?」

「良いよ」

 彼はお構いなしに歩き出す。

「あなたの名前は智之さん?」

「そうだよ。久井智之」

 先に口を開いたのはあたしだった。

 彼はそこで足を止める。

「俺は美枝から何度も名前を聞いて知っていたけど、知るわけないよね」

 彼は髪の毛をかきあげた。

「どうして美枝がわたしの話をしていたんだろう」

「結構他愛ない話だけどね。先輩が学年でトップだったらしいとか、話しかけたいとかそういう話」

 あたしは耳を疑った。