「何が?」

「あたし、北村さんに聞いたんですよ」

 そう言った由紀子の口の動きが止まる。彼女は驚いたようにあたしの後ろを眺めている。

 彼女の視線に促されるように振り返ると、そこには学ランを着た背丈の高く体つきのがっしりとした男性の姿があった。

 美枝の幼馴染だ。

 彼はあたし達に気付いたのか、こちらに寄ってくる。

「野田さんに用があったんだけど、携帯番号を知らなかったから。急に来て悪い」

「そういえば」

 何度か顔を合わせたが、番号を交換していなかった。

 あたしは彼の家を知っているが、当然彼は知らず、あたしに用があれば学校に来るしかないことは分からなくもない。

「あたしは先に帰っていますね」

「ごめんね。でも、さっきの話は?」

 彼女は言いにくそうに彼を見ていた。