SAYONARA

「事情が呑み込めないけど、あいつが誰かほかの男と一緒にいたってこと?」

 彼は眉根を寄せ、難しい顔をする。

「あなたと。昨日一緒に買い物をしたりとか、一緒にお店に入ったりとか。朝も一緒にいたよね」

 自分で言った言葉に嫌気が刺す。あたしにはそんな権利もないのだ。

 つかまれていた手が離れ、ほっと胸を撫で下ろす。

 だが、整った顔にのぞきこまれ、思わず後ずさりした。

「見かけによらずすごいバカなんだな」

「バカ?」

 反射的に彼を見る。

 彼は呆れたような笑顔を浮べていた。

「美枝はその功ってやつのことがすごく好きみたいだから大丈夫だよ」

「どうしてそんなことが分かるんですか?」

「見ていれば分かる。それにあいつの誕生日になったら分かるよ。次の次の日曜だっけ?」

「誕生日って、プレゼントを選んでいたの?」

「合っているような間違っているような。でも、あっているとは思うよ」