「そ」

 複雑な気持ちを悟られないように素っ気ない返事をする。

「珍しい。勉強とか?」

「いろいろあるのよ」

 本当のことを言えるわけもなく、曖昧に答える。


「今日はいつもより遅くない?」

 この前美枝と功が二人でいるのを目撃してから、あたしは登校時間を自然と遅らせるようになっていた。

 早く行けば会う確立はぐんと低くなるが、早起きというものは辛い。それに早く学校に着いても鍵を職員室まで取りにいくのは面倒だった。残された選択肢は遅く登校することだった。