SAYONARA

「美枝の友達?」

 彼が呼び捨てをしていることを知っているはずなのに、彼がそう呼ぶと胸の奥が痛んだ。

「知り合いです」

 友達と言っても、彼女はあたしのことを多分知らない。

 明らかな知り合いの彼に対して、そういうことを言うのはおこがましい。

 もっとも卒ない言葉を探し出し、彼に伝えた。

 美枝という名前を出した限り、知らないという選択肢はないと思ったのだ。

 彼はあたしの言葉に笑顔を浮べる。

「そっか。あいつにもこんなに可愛い知り合いがいたなんて思わなかった」

「可愛い?」

 想像していなかった言葉を聞かされ、想像以上に動揺してしまっていた。

「うん。可愛い」

 彼はあっけらかんと言ってのける。